賃貸住宅を探しているときには、契約前に物件を見学することが多いでしょう。大きな買い物であるマイホームの購入ともなればなおのこと、契約には慎重になるものです。新築住宅であれば見学が難しいこともありますが、中古一戸建ての場合多くは実物の見学が可能です。
中古一戸建ての物件を探しているAさん家族も気になる物件がいくつか見つかり、実際に見学してみようということになりました。中古一戸建ての物件の見学は初めてのAさん家族ですが、どのようなポイントをおさえておけばいいのでしょうか。
見学に重要な“冷静さ”と“入居後のイメージ”
売り主にとって、中古一戸建ての物件は大切な“商品”です。購入を検討している方に気に入ってもらえるよう、見学の場ではインテリアの演出から営業トークまでさまざまな手を尽くします。
購入を検討している方も、そうした物件を目にすれば新たな住まいへの夢がふくらむでしょうし、たくさんの物件を見学していれば疲れて判断力が鈍ってしまうことも。そうして売り主側のペースに乗せられたまま決断してしまうと、大きな後悔につながりかねません。
物件の見学では「冷静さを保つこと」を常に意識しましょう。判断をせかされるようなことがあっても、自分や家族が納得できるまでは不用意に結論を出さないという姿勢で、物件をくまなく見学するのです。
また、物件をただ漠然と見るのではなく、「その物件に実際に住むこと」を具体的にイメージしながら見学するのも重要なポイントです。実際に住む自分や家族が困ることのないようすみずみまで目を配り、遠慮なく質問することが大切なのです。
実物で確認しておくべき7つのポイント
家の外観
屋根の破損や塗装のはがれ、外壁や基礎のひび割れ(クラック)、軒裏の亀裂や雨樋の破損などがないかどうか、ある場合はその度合を確認しておきます。
外の雰囲気
家の外に立ったときに聞こえてくる音や、周辺にただようにおいなどは住み心地に影響しますし、近隣の雰囲気の第一印象も大切です。
内壁や柱、床
壁のひび割れ(クラック)やカビ、クロスのゆがみ、床のきしみや傾き、柱の状態などを確認しましょう。雨漏りの跡や湿気による腐食なども忘れずに確認を。
屋根裏、床下
屋根裏には雨漏り、床下はシロアリの被害などの可能性が考えられます。きちんと確認するためには、第三者の専門機関にホームインスペクション(住宅診断)を依頼するという選択肢もあります。
窓や建具、収納
ドアや窓、サッシ、クローゼットやシンク下など、開け閉めできる場所はすべて実際に開閉の動作をしてみて、スムーズに開閉できるか、不具合がないか、確認しましょう。
水回り
キッチン、洗面所、トイレ、バスルームなどの水回りでは、水栓の不具合、水漏れやカビなどの有無と合わせて、においも要チェックです。
補修の履歴
中古一戸建ての場合、修繕やリフォームの履歴が書面で残っていないことが多いので、見学の場で実際に見ながら説明してもらうといいでしょう。
物件見学で営業担当者もしっかり見極める~アンカリング効果に注意~
中古一戸建ての売買を販売企業や仲介の不動産会社と交渉するケースでは、企業の営業担当者とやりとりすることになります。物件の見学ではさまざまな質問や交渉などをとおして、営業担当者が信頼に値するかどうかをしっかり見極めることも大切です。
経験豊富な営業担当者の場合、「アンカリング効果」をうまく使って購入の意思決定を促そうとすることがあります。これは、「最初に提示された価格や特徴が印象に残り、その後の判断に大きく影響する」というもので、営業の場面でよく使われる手法です。
たとえば家電量販店で、「通常価格10万円の商品が、今なら特別価格5万円!」と表示されているのを目にすることがあります。これもアンカリング効果で、「いつもの半額になっている」という情報が意思決定に影響し、購入につながりやすくなるのです。
アンカリング効果は価格だけでなく物件スペックなどでも応用されますが、こうした“お得感”に惑わされることなく、物件一つひとつの価値を冷静に見極めたうえで購入するかどうか判断しましょう。
おわりに
中古一戸建ての場合、購入した物件にそのまま住むのか、ある程度リフォームを施してから入居するのか、全面的にリフォーム・リノベーションするかによって、チェックすべきポイントは異なってきますが、基本的におさえておくべきポイントや、物件見学にあたっての心構えは共通です。
Aさん家族も、実際の物件見学を前にわくわく半分、不安半分という心情ですが、持ち物リストやチェックポイントなどを事前にしっかり準備し、万全の態勢で当日に臨むことで、冷静に見学して必要なチェックができるようになるでしょう。